Newsweek

2006.4.19号
タイのタクシン元首相と言えば、タイ一の富豪で、一代で巨万の富を築いた商才の人というイメージがある。政治家としても、農民などの貧困層に対しても、様々な政策を労しており、そういった人々からの支持率は高い。
その反面、東南アジア諸国にある、親族にあまいという習慣も、例外なく見られる。自らの基盤固めと相成って、軍や警察の高官には家族をつけていることや、反政府報道メディアを、タクシン一族関連企業が買収するなど、報道弾圧も目に付く。
この二面性をたして、プラスになるかマイナスになるかは正直わからない。しかし、タクシンによって、タイの経済は潤いを持ち、好景気である、という現実がある。
要するに、独裁的でありながらも、ちゃんと国をいい方向に持っていけたということなのだろう。ただし、この人の場合、このままいけば、完全なるタクシン利権国家と成り下がってしまうように考えるのも、難しくない。なんせ華僑ですから、彼。
ちなみに、トルコのムスタファ=ケマル氏のように、国が一番自分は二の次のような良い独裁者ではないことは確かだ。
要するに、民衆が立ち上がったのは独裁に近い民主主義だったからだ。民主主義から独裁者が生まれた例としては、ヒトラーナチスがあるが、あれは、他国との戦争、そして敗北によって、独裁から解かれたのであって、内政では解決に至っていない。つまり民主主義とは、独裁者を生む可能性を秘めながら、実際に生まれた場合に、法律では対処のしようがない、ということだ。大きな力を持つ議員というのは、法のもとに平等な人民の上に立つ存在となる。ゆえに、民主主義は不完全であり、時には法とは別の力の行使もやむをえないということなのかもしれない。


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